千田みかさ

                                                    

                                                    

 

モロッコで1人で暮らし始めたころ、私は言語をもっていなかった。                                                 どうやってバスに乗るのか、わからなかった。
自分がなにもできない存在で、だれかの助けがないと生きていけないと感じた。
事実、だれかがそこにいてくれて、助けてくれた。
私はひとつひとつ言葉を覚え、生活の仕方を身につけた。
幼い子どもがするように。

ホンジュラスでも同じことをした。
裕子、瑠依子、優太がホンジュラスに来てくれたとき、彼らも同じだった。
なにもわからなくて、途方に暮れた。
あいさつする。タクシーに乗る。買い物をする。
ひとつひとつできるようになっていった。
人に助けられて。

生まれ直すために旅をしなさい。
パウロ・コエーリョが言った通り。

Midorigo
ホンジュラスで生まれ直した4人が作ったダンス。

「震災前のメールは全部消した。一度死んだと思ったから」
と友は言った。
そうだ、私たちまた生まれ直したんだ。

これがはじまり。
Midorigoは、そういう決意表明である。

Midorigoの上演はこれが最後である。
4人はそれぞれまた新しい道を歩く。そういう決意表明なのである。

                           千田みかさ